【獣医師執筆】犬に食物繊維は必要!効果や必要量、摂りすぎの際の下痢などのリスクを解説
食物繊維は犬の腸内環境を整え、ダイエットにも効果的な栄養素です。摂りすぎると下痢につながることもあり、適量を知ることが必要です。今回は食物繊維の働きや、おやつや手作りごはんに挑戦したい飼い主さんにオススメの高繊維な野菜や果物など食べ物について解説します。
犬に食物繊維は必要な栄養素
食物繊維は三大栄養素の一つ、炭水化物に含まれ、犬にも大切な栄養素です。実は古くから「栄養としての価値はなく、食感を悪くする邪魔者」として扱われてきたのですが、近年の研究によってその価値が見直されてきました。
タンパク質や脂質、糖質は消化管から出る酵素によって消化されますが、食物繊維は消化されずに腸内細菌の発酵を受けて短鎖脂肪酸となります。短鎖脂肪酸は脂肪の材料になったり、エネルギー源になったり、pHを低下させて病原性細菌の増殖を抑えたりします(※)。
犬が食物繊維を摂ることで期待できる効果
食物繊維は「水に溶けやすい水溶性」と「水に溶けにくい不溶性」の2種類の特性を持ちます。水溶性は水に溶けてゲル状になって胃腸に溜まり、不溶性は保水してフードや糞便をかさ増しするのが特徴です。
共通 |
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水溶性 |
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不溶性 |
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代表的な食物繊維を水溶性と不溶性にわけると以下のようになります。ペクチンやグアーアムは腸内細菌による発酵を受けやすく、セルロースは保水力が高い特徴があります。
水溶性 | ペクチン | 野菜、果物(※1) |
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グアーガム | グアー豆 | |
イヌリン | 菊芋、ごぼう、ゆり根 | |
アルギン酸 | 昆布、わかめ | |
寒天 | 寒天(テングサ、オゴノリなど)(※2) | |
キサンタンガム | 主にトウモロコシデンプンから人工生成 | |
難消化性デキストリン | 主にトウモロコシデンプンから人工生成 | |
不溶性 | セルロース | 穀類、野菜、果物 |
ヘミセルロース | 穀類、野菜、果物 | |
キチン・キトサン | 甲殻類 |
犬にとって食物繊維は腸内環境を整える
腸内にはさまざまな細菌がいることから「腸内細菌叢(そう)」や、お花畑に例えて「腸内フローラ」と呼ばれます。腸内細菌が体に与える影響は大きく、バランスが崩れるとアレルギーや炎症性腸疾患、下痢につながります。
腸内環境を整えるためには、腸内細菌「プロバイオティクス」や腸内細菌の増殖を促進する「プレバイオティクス」が重要です。食物繊維はプレバイオティクスとして、腸内環境の改善に役立ちます。
・乳酸菌 ・ビフィズス菌 ・納豆菌など | ・食物繊維 ・オリゴ糖など |
犬の腸内環境を整える食事については、以下の関連記事もご覧ください。
犬は食物繊維の摂りすぎに注意
犬にとって食物繊維が体に良い影響を与えてくれると言っても、摂りすぎれば逆効果になります。例えば食物繊維はタンパク質や脂質、糖質のエネルギー利用効率を低下させるため、ダイエットが必要ない子はエネルギー不足になってしまいます。
便秘の改善に効果的な不溶性食物繊維も、摂りすぎると便秘を悪化させる場合があります。特に腸の動きが強すぎることで起こる「けいれん性便秘」の場合、かさ増しによって余計に刺激を与えてしまいます。
水溶性の場合も摂りすぎると下痢を悪化させる可能性があります。ダイエットのために高繊維食を手作りしたり、サプリメントとして食物繊維をトッピングしたりする際は、与えすぎに注意しましょう。
犬が摂るべき食物繊維の量
食物繊維は犬にとって大切な栄養素ですが、必須ではありません。そのため総合栄養食の栄養基準を策定している「AAFCO」(米国飼料検査官協会)は、食物繊維について必要量の基準値を設けていません。
必須ではないものの、健康な体をつくるためには乾物中5%未満の繊維量が目安とされています。摂り過ぎは良くありませんので、減量用でも乾物中12〜25%、肥満再発予防でも10〜20%が推奨されています(※)。
例えばペトコトのオリジナルドッグフード「ペトコトフーズ」の場合、「ビーフ」と「ポーク」が3%、サツマイモが入った「チキン」と「フィッシュ」でそれぞれ5%、6%の繊維が含まれています。
ダイエットフードでは、ロイヤルカナンの「ミニ ライト ウェイト ケア」(小型犬用)で19%、ヒルズの「サイエンス・ダイエット 減量サポート」(小型犬用)で13%の繊維が含まれています。
犬に必要な食物繊維が多く含まれる食べ物
食物繊維を多く含む野菜や果物を毎日のごはんにトッピングしたり、おやつとして食べさせてあげたりしてはいかがでしょうか? 食べ過ぎれば肥満になってしまいますので、1日の最適カロリー量の10%を超えないように注意してください。
1日の最適カロリー量は「ペトコトフーズ」の「カロリー計算機」(無料)で簡単に計算することができます。
犬に必要な食物繊維を多く含む野菜
犬に必要な食物繊維を多く含む果物
犬に必要な食物繊維を多く含むその他の食べ物
犬に必要な食物繊維が豊富なおすすめドッグフード
犬の食べ物は「エサ」と呼ばれていた時代から、家族の「ごはん」と呼ぶ時代へ変わりました。私たちと同じように、犬も栄養バランスの良いごはんを食べることで健康を維持することができます。ごはん選びをする際は、以下の2点を気を付けていただくといいでしょう。
1. 総合栄養食を適量与える
犬が必要とする栄養は人間と同じではありません。そこで生まれたのが「総合栄養食」と呼ばれるごはんです。おやつなど「一般食」や「副食」と呼ばれるごはんだけ食べていると体を壊してしまいますので、「総合栄養食」のごはんを選ぶようにしましょう。総合栄養食を食べていても与える量が少なければ痩せてしまいますし、多ければ太ってしまいます。パッケージに書かれた食事量は目安ですので、ボディ・コンディション・スコアで「3」の「理想体型」を維持できる量を与えるようにしてください。
2. 添加物の少ない新鮮なごはんを選ぶ
犬のごはんと聞いて「カリカリ」と呼ばれる茶色い豆粒を想像される方も多いと思いますが、正しくは「ドライフード」と呼ばれる加工食品です。保存しやすく食いつきも良いことから犬のごはんとして一般的になりましたが、高温加熱によって食材本来の栄養が失われ、添加物も多く含まれることから見直しが進んでいます。新鮮な野菜を犬や猫に与え続けることで、様々ながんに罹るリスクを軽減することが研究で判明していたり、市販のドライフードを製造する工程の1つである高温加熱処理が、タンパク質の品質劣化を招き、熱に弱いビタミンを破壊し、さらには発がん性物質を生成してしまうことが、研究により判明しています。そこで生まれたのが素材本来の旨味や香りが楽しめ、余計な添加物も入っていない「フレッシュフード」と呼ばれる新鮮なごはんです。ペトコトフーズもその一つで、子犬からシニア犬(老犬)まで毎日のごはんにすることができます。もちろん総合栄養食で、主食としても、トッピングとしてもご利用いただけます。
実際に従来のドライタイプのドッグフードよりも、水分がより多く含まれた手作り品質のごはんを食べている犬の方が寿命が3年も長くなることが研究により明らかになっています。新鮮で美味しく、健康なごはんを選ぶことが長生きできる秘訣です。