
犬はビタミンCを体内で合成して作れるため、食事などで摂取量が不足して何か症状が出るようなビタミンではありません。過剰摂取の危険性も高くありませんが、人間用のサプリメントを大量に与えたり、がん治療を目的とした高濃度点滴は注意が必要です。今回はビタミンCが不足する場合や必要量の考え方、多く含む食材・食べ物について解説します。
犬はビタミンCを体内で作れる

ビタミンはタンパク質や脂質、炭水化物のようにエネルギーや体の材料になることはありませんが犬にとって生きていくためには欠かせない栄養素で、五大栄養素の一つに数えられます。ビタミンは全部で13種類あり、ビタミンCはその中でも特に有名なビタミンです。
ビタミンCは抗酸化作用があり、植物に含まれる鉄分の吸収を高める効果や免疫力の向上効果が期待できます。がんの予防効果も期待されており、胃がん、口腔がん、肺がんのリスク減少との関係が報告されています。
私たちはビタミンCを食事など体の外から摂らなければいけませんが、犬を含むほとんどの動物は体内でビタミンCを作ることができます。しかし犬は他の動物と比べて合成能力が低いため、生活環境や病気、体重、年齢など体の状態によって補給が必要になります。
例えば飼い主さんが室内でタバコを吸うなど日常的に副流煙を吸う犬の場合、合成能力が追いつかずに体内のビタミンC濃度が低下している可能性があります。
犬がビタミンC不足で起こる症状
ビタミンCが不足した場合に起こる病気として、「壊血(かいけつ)病」があります。体の至るところから出血が起こる病気で、そもそもビタミンCは壊血病の研究中に見つかりました。ただ、人と違ってビタミンCの合成能力を持つ犬が壊血病になることは非常にまれです。犬のビタミンC必要量

犬は体内でビタミンCを合成できるため、総合栄養食の栄養基準を策定しているAAFCO(米国飼料検査官協会)は下限値を設定していません。つまりドッグフードや手作りごはんなど普段の食事に含まれるビタミンCがゼロであったとしても、ほとんどの犬は問題になりません。
ただし、ビタミンCは肝臓で合成されるため、肝臓疾患の犬はビタミンCを食材やサプリメントなどで補給する必要があります。また、タバコの煙や高血圧、肥満は酸化ストレスを増加させて体内の抗酸化物質を消耗枯渇させるため、抗酸化ビタミンの補給が必要になります。
抗酸化ビタミンはビタミンAとビタミンC、ビタミンEがあり、まとめて「ビタミンACE」(エース)と呼ばれます。なお、犬はβカロテンからビタミンAを合成することが可能です。
犬に人間用のビタミンCサプリメントを与えて大丈夫?
アレルギー成分が含まれていない限り、人間用のサプリメントを犬に与えても問題はありません。ただしマルチビタミンのようにビタミンC以外のビタミンやミネラルが含まれている場合、それが過剰摂取につながる可能性はあります。ビタミン類ではAAFCOは、ビタミンDにのみ上限値を設定しています。安全性が高いと言われているビタミンCも、過剰摂取のリスクがゼロというわけではありません。健康に問題がない子であればあえて人間用のサプリメントを与える必要性はありませんので、与えたい場合は必ず獣医師に相談するようにしてください。
犬のビタミンC過剰摂取で起こる問題

水溶性のビタミンCは過剰摂取しても尿として体の外に排出されるため、AAFCOの栄養基準に上限値は設定されていません。食事やサプリメントなどでビタミンCを過剰摂取したとしても問題が起こることはほとんどありませんが、注意点が二つあります。
- シュウ酸カルシウム結石
- 腎障害
1. シュウ酸カルシウム結石のリスク
ビタミンCを過剰に摂取すると尿として排出されるシュウ酸の量が増加するため、シュウ酸カルシウム結石のリスクが高まる可能性があります。好発犬種や過去に経験がある犬は注意が必要です。なお、シュナウザーやプードル、シーズー、ヨークシャーテリア、ビションフリーゼ、ラサアプソなどがシュウ酸カルシウム結石の好発犬種です。
2. 腎障害のリスク
シュウ酸の増加は腎機能に悪影響を与える可能性もあります。人の場合、サプリメントや高濃度点滴による過剰摂取が原因と考えられる腎障害が報告されています。ビタミンCの高濃度点滴はがんの治療効果が期待されて犬でも行われていますが、現時点で有効性は証明されていません。安全性が高くてもリスクがゼロではないという点に注意が必要です。
ビタミンCを多く含む食べ物

ビタミンCは犬にとって必ず摂らなければいけないビタミンではありませんが、食材にどれくらい入っているのかを知っておくのは大切なことです。果物と野菜にわけてビタミンCを多く含む食べ物を紹介しますので、おやつや手作りごはんを与える際の参考にしてください。
ビタミンCを多く含む果物
ビタミンCはキウイや柿、イチゴ、オレンジなどのフルーツに多く含まれます。![]() |
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ビタミンCを多く含む野菜
ビタミンCはピーマンやブロッコリー、モロヘイヤ、ほうれん草などの野菜に多く含まれます。![]() |
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与える際の注意点

総合栄養食へのトッピングやおやつとして与える場合は、1日の最適カロリー量の10%以内にしてください。1日の最適カロリー量はペトコトフーズの「カロリー計算機」(無料)で簡単に計算することができます。
まとめ

水溶性のビタミンは過剰摂取のリスクが低いと言われていますが、人間用のサプリメントを与えたり高濃度点滴をしたりした場合、腎障害を起こす可能性があります。食事は愛犬の健康、寿命に直結するもの。バランスの良い食生活を心掛けましょう。
参考文献
- 「小動物の臨床栄養学 第5版」
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