甲斐犬のしつけは難しい?性格を踏まえたしつけ方法をトレーナーが解説
古くから日本で暮らしてきた甲斐犬は、特徴的な虎模様の毛から「虎毛犬」とも呼ばれることもあります。天然記念物にも指定されていますが、狩猟犬でもあるため警戒心が強く、人に懐くまでに時間がかかることもあります。今回は、甲斐犬の甘噛み・噛み癖といった問題行動やトレーニング方法について、ドッグトレーナーの西岡が解説します。
甲斐犬をしつける前に知っておくこと
犬のしつけ方法は多種多様ですが、犬種に適したしつけ法を見つけるのがポイントです。さらに、飼い主が愛犬に合ったしつけ法を取捨選択していきましょう。
基本は主従関係よりも信頼関係
かつては「しつけ」というと、犬と飼い主の主従関係を築くことが基本であるといわれていました。しかし近年では、犬と飼い主がお互いに心を開き信頼し合うことが大切であると考えられています。信頼関係を築くことができない飼い主の行動の例として、ネガティブな気持ちを犬に押し付けたり、頭ごなしに叱ったり、一貫性のない行動をすることなどが挙げられます。
どんなに正しい方法でしつけをしていても、信頼し合えていない犬と飼い主がトレーニングをすることは難しいでしょう。
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甲斐犬の性格
甲斐犬は原始的で、オオカミに近い犬種です。イノシシなどの野生動物を追いかける勇敢な猟犬として、日本人と共に長い歴史を歩んできました。
とても気が強いので、ほかの人や犬に対しては警戒心を露わにすることがあります。まずは飼い主と認められるために、家族は凛とした態度で接するようにしましょう。
甲斐犬に見られる問題行動
攻撃しやすい習性がある甲斐犬の問題行動は、放置すると大きな事故にもつながりかねません。
問題行動が見られたら、早めの対応としつけの見直しを行ってください。
飛びつき
子犬の頃は可愛らしかった飛びつきも、成犬の甲斐犬に飛びつかれると、転倒や怪我につながる可能性があります。例え子犬でも、散歩中に他人に飛びつけば、それがトラブルの元になることも考えられます。
家の中でも、飼い主に飛びついたら無視する、もしくは「ノー」と教えることを徹底し、落ち着いておすわりができたらおやつをあげるなど、コマンドとご褒美を与えながら教えていきましょう。
甘噛み・噛み癖
甲斐犬は、遊びにおいての噛みつきでも洋服が破れるほどの力を持っています。痛みを感じるほど強く噛んできたら、遊びを中断し、一度落ち着かせましょう。成長過程で歯がかゆい子犬には、噛んで遊べるおもちゃを与えてください。
飼い主以外には強い力で噛みつくことも少なくありません。社会化やコマンドによるコントロールが大切です。
マーキング
気が強い甲斐犬は、マーキングが多い傾向にあります。オスの本能によるものも大きいので、去勢することも1つの方法です。
マーキングは、行動そのものをやめさせるよりも、縄張り意識がある「テリトリー」を狭めていくことが効果的です。本人が自分の場所だと認識する場所を限定していきましょう。
甲斐犬に必ず教えたいしつけコマンド
まず、指示を出すときのコマンドは統一しましょう。1つの目的につき1単語が基本です。
コマンドは、犬の興奮を抑える効果もあるので、緊急時にも役立ち、犬の安全を守ることができます。
日本犬は洋犬と比較すると、コマンドを覚えるのは早くはありませんが、根気よく教えればしっかり学習してくれます。
焦らず、時間をかけて行いましょう。
トイレトレーニング
成長するとトイレを外でしかしなくなることも多いですが、できれば家に設置したトイレシートの上でもできることが理想です。犬が高齢になったとき、排泄のためだけに長時間散歩することは、愛犬にとって大きな負担になります。また、おしっこの色が確認できないので異変に気づく機会を失うことにもなります。
おしっこをするときに「トイレ」や「ワンツー・ワンツー」と声をかけ、トイレの合図として定着させておくと、引っ越し後などもすんなりとトイレの場所を覚えさせることができます。
ポイントは、とにかく叱らないことです。上手にできたら褒める、を繰り返しましょう。
なかには飼い主の気を引くために、わざと間違った場所でおしっこをする犬もいます。そのような場合には、犬をクレートに入れるなどして飼い主が見えない場所に連れていき、犬がいない間に掃除をしましょう。
待て
「待て」は、ご飯やおやつをあげる前に教えると効果的です。完全に身体で覚えたら、毎回ご飯の度に無駄に待たせる必要はありません。拾い食いをしそうになったときなどに活用しましょう。家の中だけではなく、どんな状況下でもできるように、普段からトレーニングしておくことが大切です。「待て」のひと言で行動をコントロールすることができるようになれば、危険の回避にもつながります。
おすわり
「座ったらおやつをあげる」を繰り返して教えるのが一般的です。興奮しているときはもちろん、 散歩中、信号待ちの際に飛び出さないように落ち着かせることで、危険を回避できます。また、威嚇した様子の犬が近づいて来たときには、愛犬を道の端に座らせて、先に通過してもらうことでトラブルを防ぐこともできます。
ハウス
来客時や寝るとき、そして災害時などに必要なしつけです。インターホンが鳴ったときの無駄吠えなどをなくすためにも「ハウス」を使ったトレーニングは有効的。さまざまなしつけに応用して使えるコマンドです。
おいで
愛犬を呼び寄せるためのコマンドも大切です。遊びや運動を兼ねて「おいで」のトレーニングをすると身につきやすいです。まずは室内からはじめましょう。室内でできるようになったら、ドッグランなど屋外のさまざまな刺激がある場所でもできるよう、レベルを上げていきます。
自信をつけさせてあげるために、しつけの導入として行うのもおすすめです。
分離不安
散歩や外出時に抱っこしたまま肌身離さないのは、犬の社会化を妨げる原因にもなります。これらは分離不安につながることもあり、留守番ができなかったり、ペットホテルから宿泊を拒否されたりなど、生活にも影響が出てきます。
犬も人間と同じように、ほかの犬と触れ合ったり、ひとり遊びをしたりすることで、社会性を身につけます。
今まで社会化をしてこなかった犬が、突然「みんなと仲良く遊びなさい」と言われたり、飼い主さんがいなくなったりしたら不安になるのも無理はありません。そのせいで問題行動を起こすこともあります。
分離不安を治すためには、少しずつ時間をかけて社会化をしていくことが効果的です。飼い主への依存状態から脱却し、ほかの犬や人に慣れさせていきましょう。
甲斐犬のしつけに必要なもの
ご褒美(おやつ)
練習は繰り返し行うものなので、ご褒美として与えるおやつは、ひと粒が小さく、太りにくい食材でできているものがおすすめです。食欲旺盛な犬種なので、食べ過ぎないようコントロールしながら与えましょう。
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おもちゃ
おもちゃで活動的に遊ぶようなことは比較的少ないですが、固くて長時間かじることができるものはストレス発散になるためおすすめです。クレートの中で落ち着かせるためにおもちゃを用意したり、咥えたものを離させるトレーニングにもおもちゃを活用できます。
むやみに与えるのではなく、飼い主の顔を見ることができたらおもちゃを与えるなどルールを作っておくと、その後のしつけにも応用しやすくなります。
クレート・サークル
夜寝るときや留守番時だけでなく、トイレトレーニングや「ハウス」のコマンドトレーニング、無駄吠えをなくすトレーニングなど、さまざまなトレーニングで使います。愛犬にとってのお気に入りの場所になるよう、環境を整えてあげてください。
子犬の甲斐犬にしておくと良いしつけ
社会化トレーニング
甲斐犬と暮らす上で、最も大切な要素の1つは、社会化トレーニングです。警戒心が強く、飼い主以外には威嚇する可能性があることから、他人に慣れさせておく必要があります。社会化不足が引き起こす噛みつきなどは、大きな事故につながりかねません。
子犬の頃からほかの犬と触れ合わせるのはもちろん、さまざまな場所へ連れていき、匂いを嗅がせるなど、刺激のある環境で遊ぶことで、社会性を身につけさせましょう。
犬にとって「攻撃するべき相手ではない」ということをしっかり教えなくてはなりません。
子犬の時期はすべての犬にとって、社会化するのに大事なタイミングです。普通に暮らしていても社会化は難しいため、意識的に社会化トレーニングをすることが大切です。
不妊去勢
ホルモンの分泌を抑えることができる去勢も、問題行動の解決策の1つになることがあります。生後7〜10カ月までに行うと効果的といわれます。ストレスを軽減させるために
問題行動の原因がストレスの場合には、しつけよりも先に根本的な原因を取り除くことが優先です。
十分な量の運動を行う
甲斐犬はまとまった量の運動が必要な犬種なので、毎日のお散歩は欠かせません。もともと山を走り回るような犬種なので、山や海に出かけるレジャーなど、自然のなかで運動することは、とても良いストレス解消になります。
ただし、あまりドッグランなどで遊ばせるのに適したタイプではありませんが、しっかり社会化ができていれば、他の犬と遊ぶこともできます。
音・環境に慣れさせる
雷や花火などの大きな音を苦手とする犬はたくさんいます。これらは自然現象なのでトレーニングで慣れさせることは難しいですが、パニックを起こしにくくする訓練は可能です。日常的な音が原因で無駄吠えをするなら、防音対策をしたり、音の原因を取り除いたりするなどの対応も、可能な限りやってあげるといいでしょう。
しかし、犬にとって不快な雑音のすべてを取り除くことは難しいです。ただ、犬は人間よりも環境の変化に敏感に反応する生き物なので、日々その音を聞かせて慣れさせるというトレーニングを行うことで、その音に徐々に慣れていき、問題行動も減っていきます。
ボディーコントロール
身体のどこを触っても嫌悪感を抱かせないために行うトレーニングです。子犬の頃から毎日少しずつ、負担のない程度に身体のさまざまな箇所を触る訓練が効果的です。
ボディーコントロールができていれば、日々のケアや動物病院での診察で感じるストレスを軽減することができます。特に力のある大型犬なので、診察台で暴れるリスクを軽減するためにも大切な訓練です。
身体を仰向けにしてお腹を見せる「リラックスポジション」までできるようになることが、理想的な状態といえます。
甲斐犬のしつけをトレーナーや教室に依頼するメリット
飼い主個人でしつけを行うにはどうしても難しい場合や、高いしつけ効果を望む方も多いと思います。そんなときは、プロにお願いするのも1つの方法です。
犬の社会化に効果がある
ほかの犬に吠えたり噛み付いたりする問題行動がある場合、個人で社会化のトレーニングをさせることは、危険やトラブルが伴うことがあります。しかし、トレーナーのもとやしつけ教室では、複数の犬と交流できることが多いため、プロの指導のもと適切なトレーニングを行うことが可能になります。
愛犬のことを客観的に知ることができる
家で一緒に過ごす愛犬の姿だけを見ていると、家族としての一面しか知ることができません。しかし、しつけ教室なら家族以外にもきちんと心を開く姿を見ることができたり、ほかの犬に対する意外な反応を見ることができます。
愛犬を客観的に知ることで、愛犬と飼い主との絆が、より強くなるでしょう。
まとめ
甲斐犬は勇敢な猟犬のため、警戒心も気も強いものの、飼い主には忠実です
子犬の頃からしつけや社会化トレーニングを行うことが大切です
飛びつきや噛み癖は、きちんとしつけないと大事故に繋がる可能性があります
甲斐犬は、飼い主への忠誠心が強く、とても従順です。
飼い主としての自覚を持ち、社会化トレーニングをはじめとしたしつけを徹底して行いましょう。そうすることによって、古くからの日本の伝統にもみられるような、良きパートナーとしての関係を築くことができる犬種です。
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